
企業経営において、従業員の労働時間と休憩時間を適切に管理することは最も重要な責務の一つです。本記事では、労働基準法で定められた基準から実践的なシフト作成の方法まで、経営者やシフト管理者の方々に向けて、わかりやすく解説します。
目次
労働時間と休憩|知っておくべき基礎知識
労働基準法で定められている労働時間と休憩に関する基本的なルールを理解することは、事業運営において非常に重要です。ここでは、労働時間の原則から特殊な勤務形態における規定まで、押さえておくべき基礎知識をわかりやすく解説します。
労働基準法の基本原則
労働基準法は、従業員の適切な労働条件を確保するための最も基本的な法律です。特に労働時間と休憩に関する規定は、企業経営において必ず押さえておくべき重要な内容となっています。ここでは、人事労務管理の基盤となる基本的な考え方について解説します。
労働時間の原則と時間外労働について
労働基準法では、1日8時間、1週間40時間を法定労働時間と定めています。
この時間を超えて従業員を働かせる場合には、労使協定(36協定)の締結と届出が必要です。36協定を締結した場合でも、時間外労働には月45時間、年間360時間以内といった明確な上限が設けられており、特別な事情がある場合でも年間720時間を超えることはできません。
また、単月では休日労働も含めて100時間未満、複数月の平均では80時間以内という制限がある点にも注意しましょう。
休憩時間の原則
労働時間が一定時間を超える場合、使用者は従業員に対して休憩時間を与える必要があります。
具体的には、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません。この休憩時間は労働時間の途中に設定し、原則として全従業員に一斉に与える必要があります。
また、休憩時間中は従業員が自由に利用できるようにしなければなりません。
割増賃金(時間外労働、休日労働、深夜労働)について
法定労働時間を超えて従業員を働かせる場合や、深夜時間帯(22時から翌5時)に働かせる場合には、通常の賃金に割増率を乗じた割増賃金を支払わなければなりません。
時間外労働の場合は通常の賃金の25%以上、休日労働の場合は35%以上、深夜労働の場合は25%以上の割増賃金が必要です。さらに、時間外労働と深夜労働が重なる場合は、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
サービス業における労働時間と休憩の特例
サービス業では、営業時間や顧客の来店状況に応じて柔軟な勤務体制が求められることから、労働基準法では通常の労働時間や休憩時間の原則とは異なる特例が設けられています。ここでは、サービス業特有の労働時間制度について、その概要と活用方法を解説します。
変形労働時間制の導入要件と注意点
変形労働時間制には複数の種類があり、事業の特性に応じて選択できます。1年単位の変形労働時間制では、繁忙期と閑散期に応じて労働時間を柔軟に配分することが可能です。この制度を導入する際は、労使協定の締結と届出が必要となり、1日10時間、1週52時間という上限を遵守しなければなりません。
1か月単位の変形労働時間制では、月間の所定労働時間を平均して法定労働時間以内に収めることが求められます。この制度の導入には、労使協定または就業規則での規定が必要です。
また、フレックスタイム制では、一定期間の総労働時間を定めた上で、従業員が始業・終業時刻を選択できるようになります。必要に応じてコアタイムを設定することも可能です。
シフト制勤務における労働時間管理のポイント
シフト制勤務では、法定労働時間の遵守はもちろん、勤務と勤務の間に適切な休息時間を確保することが重要です。シフトの変更が必要な場合はできるだけ早めに従業員に通知し、十分な準備時間を設けるようにしましょう。また、労働時間を正確に記録し、適切な管理を行うことも大切です。
休憩時間の例外規定(交替制勤務など)
交替制勤務などの特殊な勤務形態では、一斉付与の原則に例外が認められています。従業員が交替で休憩を取得するほか、休憩時間を分割して取得することが可能です。ただし、この場合でも、法定の休憩時間を確実に確保し、従業員が実質的に休憩を取れる環境を整備するようにしましょう。
労働時間管理の重要性
働き方改革が進む中、適切な労働時間管理は企業経営における最重要課題のひとつとなっています。従業員の健康維持と企業の生産性向上の両立には、計画的な労働時間管理が欠かせません。
適切な労働時間管理のメリット
労働時間を適切に管理することは、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。従業員の健康管理から経営リスクの低減まで、具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。
スタッフの健康とモチベーションの向上
適切な労働時間管理は、従業員の健康維持とモチベーションの向上に大きく貢献します。過重労働を防止することで、心身の健康を守り、ワークライフバランスの実現が可能となるでしょう。業務効率が向上し、離職率の低下につながるほか、従業員が活き活きと働ける職場環境が整うことで、職場全体の活性化も期待できます。
組織のコンプライアンス対策
労働時間管理を徹底することは、企業のリスク管理において大きな意味を持ちます。具体的には労働基準監督署の調査に適切に対応できるだけでなく、未払い残業代の発生や労働災害のリスクを低減できるでしょう。また、適切な労働時間管理は企業イメージの維持・向上にも役立ちます。
労働時間の見える化と効果測定
労働時間を適切に管理するためには、まず現状を正確に把握し、その効果を測定することが重要です。近年のデジタル化により、より詳細な労働時間の分析が可能になっており、これを活用することで効率的な人員配置や業務改善につなげられます。
データ分析を活用した労働時間の最適化
労働時間を可視化することで、部署別・個人別の労働時間の実態を正確に把握できます。業務の繁閑を明確に理解し、無駄な残業を削減できるのはもちろん、データに基づいて人員配置を最適化し、業務プロセスを改善することもできるでしょう。
効率的な休憩の取り方
休憩時間は、単なる仕事の中断ではなく、従業員の生産性と健康を維持するために欠かせない時間です。効果的な休憩の取り方を知ることで、より充実した職場環境を作れます。
休憩の質を高める方法
休憩の質の向上は、従業員のパフォーマンスを最大限に引き出すことにつながります。ここでは限られた休憩時間を最大限活用し、心身ともにリフレッシュできる方法について解説します。
労働効率を損なわない休憩のスケジューリング
効果的な休憩時間の活用は労働生産性の向上に直結します。一般的に人間の集中力は時間の経過とともに低下していくため、集中力が低下しやすい時間帯に休憩を設定することが効果的でしょう。短時間であってもこまめな休憩を心がけることで、疲労の蓄積を防げます。
また、休憩時間を分散させれば、業務の継続性を保ちながら、従業員一人一人が十分な休息を取ることが可能になります。さらに、休憩後にスムーズに業務に戻れるよう、休憩前に作業の区切りをつけるのもよいでしょう。
心理的および肉体的休養の重要性
質の高い休憩を実現するためには、仕事から完全に離れる時間を確保することが大切です。休憩室などのリフレッシュできる環境を整備し、軽い運動や深呼吸などで心身をリフレッシュすることを推奨します。また、同僚との適度なコミュニケーションを取ることで、メンタル面でのリフレッシュ効果も期待できます。
効果的な休憩制度の設計
休憩時間は、単なる仕事の中断ではなく、従業員の生産性と健康を維持するために不可欠な時間です。効果的な休憩の取り方を知ることで、より充実した職場環境を作ることができます。
フレキシブルな休憩時間の導入
業務の繁閑や個人の生活リズムに合わせて休憩時間を調整できる柔軟な制度が求められています。休憩時間の分割取得を認めたり、休憩時間の前倒しや後ろ倒しを許容したりすることで、より効果的な休憩を実現できるでしょう。
スタッフのニーズに応じた休憩環境の整備
快適な休憩環境の整備は、休憩の質を高める上で大切です。休憩室の整備に加え、休憩時間中の私用電話やSNS利用に関するルールを明確にすれば、従業員が安心して休憩時間を過ごせる環境を作ることができます。
また、休憩時間の確実な取得を促す声かけや、休憩時の代替要員を確保するのもひとつの手でしょう。
よくある労働時間・休憩時間の違反事例
労働時間と休憩時間に関する法令違反は、企業に重大な影響を及ぼす可能性があります。ここでは、実際によく見られる違反事例とその対策について、解説します。
休憩時間に関する違反事例
休憩時間の管理は一見簡単に思えますが、実際の運用では様々な問題が発生しやすい分野です。特に小売業やサービス業では、顧客対応との兼ね合いから違反につながるケースも少なくありません。以下では、典型的な違反事例とその予防策について詳しく見ていきましょう。
休憩時間の付け方の誤り
実際には休憩を取れていないにもかかわらず、記録上は休憩を取得したことにする違反事例は少なくありません。また、休憩時間中に電話対応や作業指示を行うことも違反となる点に注意しましょう。休憩時間の一斉付与が原則であるにもかかわらず、これらが守られないケースや、休憩時間の付与タイミングが不適切なケースもあります。
休憩時間の分割における問題
休憩時間を分割して付与する場合、最低限必要な休憩時間が確保できていないケースがあります。また、休憩時間の記録方法が適切でない場合や、分割休憩時の代替要員が確保されていない場合も問題となるでしょう。これらの違反を防ぐためには、明確なルールを設定し、適切な運用を行うことが大切です。
労働時間管理の違反事例
労働時間管理に関する違反は、企業にとって深刻な問題につながる可能性があります。特に意図せず発生してしまうケースも多く、事前に注意点を把握しておくことが欠かせません。ここでは、実際によく見られる違反事例とその予防策について解説します。
変形労働時間制の運用ミス
変形労働時間制を導入する際に、労使協定の締結や届出を怠るケースが見られます。また、対象期間の設定を誤ったり、労働時間の限度を超過したりするケースも少なくありません。特定期間における時間外労働の上限を超えてしまうことも重大な違反となります。
労働基準監督署の指摘ポイント
労働基準監督署は労働時間の適切な把握、36協定の締結状況と運用状況、割増賃金の計算と支払い、労働条件の明示などを重点的にチェックします。これらの項目について、日頃から適切な管理を行うようにしましょう。
効率的かつ適切な労働時間・休憩時間の管理方法

労働時間と休憩時間を効率的かつ適切に管理することは、事業運営の根幹を支える重要な要素です。法令遵守と業務効率の向上を両立させるための、実践的な管理手法について見ていきましょう。
シフト作成の基本原則
シフト作成は、労働時間と休憩時間の管理において最も大切な業務です。法令に則った適切なシフトを作成することで、従業員が安心して働ける環境を整備できます。ここでは、シフト作成時に押さえておくべき基本原則について見ていきましょう。
法令遵守のポイント
シフトを作成する際は、法定労働時間の遵守を最優先に考える必要があります。休憩時間を適切に配置し、勤務と勤務の間に十分な休息時間(インターバル)を確保するように努めましょう。特に深夜勤務を含むシフトでは、従業員の健康管理の観点から、より慎重な配慮が求められます。
効率的なシフトの組み方
効率的なシフトを作成するためには、まず業務量を正確に予測することから始めましょう。その上で、各従業員のスキルバランスを考慮しながら適切な人員配置を行います。また、勤務の連続性にも配慮し、従業員が無理なく働ける環境を整えることが大切です。公平なシフト分配により、従業員のモチベーション維持にもつながります。
繁閑期への対応方法
小売業やサービス業では、季節や時期によって業務量が大きく変動します。この繁閑の波に対して適切なシフト管理を行うことは、業務効率と従業員満足度の両立において大きな課題です。それぞれの時期に応じた効果的な対応方法を見ていきましょう。
繁忙期のシフト調整
繁忙期に向けては、早めの人員確保と応援体制の構築が求められます。業務量の増加が見込まれる場合は、休憩時間を柔軟に設定し、時間外労働を適切に管理することで対応しましょう。ただし、法定の制限を超えないよう、細心の注意を払う必要があります。
閑散期の人員配置
閑散期には、従業員の教育訓練や設備のメンテナンスなど、普段手が回りにくい業務に時間を充てられます。また、年次有給休暇の計画的な付与を促すことで、従業員のワークライフバランスの支援も可能です。業務の平準化を図り、より効率的な運営を実現しましょう。
従業員の希望と公平性の両立
効率的なシフト管理において、従業員の希望を尊重しながら公平性を保つことは欠かせません。個々の事情や要望に配慮しつつ、組織全体のバランスを維持するための方法について解説します。
希望シフトの取り入れ方
希望シフト制を効果的に運用するためには、明確な提出期限と調整ルールの設定が重要です。優先順位を明確にし、公平性を確保しながら、可能な限り従業員の希望に沿ったシフト作成を心がけます。
公平なシフト配分の実現
シフトの公平性を保つためには、不人気な時間帯や休日出勤を特定の従業員に偏らせないよう注意が必要です。繁忙時間帯の勤務も平等に分配し、個人の事情にも配慮しながら、全体的なバランスを取ることが重要です。
労働時間・休憩時間の管理を助ける「はたLuck」
労働時間と休憩時間の管理には多くの課題が存在しますが、シフト管理アプリ「はたLuck」を活用することで、これらの課題を効率的に解決できます。
アプリ内でシフトの回収・調整・共有まで完結
はたLuckでは、シフトの回収から調整、共有までをワンストップで行えるため、店長や従業員の負担を軽減できます。
たとえば、スマートフォンからシフト希望を提出できることで、手動での入力ミスを防げるほか、シフトの変更が必要な場合もアプリ内で調整やヘルプ募集が行えます。
確定したシフトは即座に通知されるため、従業員はリアルタイムでシフトを確認できるほか、店舗まで確認しに行く必要がありません。これらの機能により、管理者と従業員双方の負担軽減が見込めます。
適正シフトに基づいたシフト作成ができる
はたLuckには「適正シフト機能」があります。この機能では、店舗別や曜日別に必要な人数を登録しておくことで、適切な人員配置が可能です。ツールに表示される適正シフトにあわせて従業員を配置すれば、シフト作成にかかる労力や時間を減らせるでしょう。人件費の最適化にもつながるため、効率化とコスト削減の両方が実現可能です。
変形労働時間制のシフト作成にも対応
はたLuckでは、1か月単位や1年単位の変形労働時間制に対応したシフト作成が可能です。変形労働時間制を導入している場合、繁忙期と閑散期の労働時間の調整が求められますが、はたLuckを活用することで適正なシフトを組むことが容易になります。
勤務条件にあわせた労務アラートを表示
はたLuckの「労務アラート機能」は、労働基準法や就業規則に違反するシフトが組まれそうになった際に警告を発する機能です。
例えば、連続勤務日数の上限や休憩時間の確保、深夜労働の制限などをチェックし、問題がある場合にアラートを出します。法令遵守が容易になり、労務におけるリスクを大幅に軽減できます。
繁閑期に活用できる予算連動マスタ
シフト機能にある「予算連動マスタ」を活用すれば、売上や客数に応じた必要な人員のみを配置できるようになります。繁閑期に人員の過不足が簡単に把握できるほか、余剰に人員を配置して採用コストが高くなるリスクも減らせるでしょう。
アプリ上でヘルプ募集もできる
はたLuckには「ヘルプ募集」機能があり、アプリ上でヘルプの募集や応募が行えます。勤務日数を増やしたい従業員と、人員を募集したい店舗側をマッチングする機能です。
これにより、従業員の急な欠勤などにも対応しやすくなります。さらに特定の店舗のみにヘルプスタッフの募集をかけることもできます。初めてヘルプに入る従業員が戸惑わないよう、アプリ上で事前に情報を共有できる点も便利です。
シフト管理の最適化で労働時間と休憩を適正に
適切な労働時間と休憩時間の管理は、従業員の健康維持と企業の生産性向上を両立させる上で不可欠です。本記事で解説した内容を参考に、自社の労働時間と休憩時間の管理を見直してみてはいかがでしょうか。
また、はたLuckの活用によって法令遵守と効率的な運営を実現し、より働きやすい職場環境を作ることができます。シフトと勤怠の連携で、効率的な労務管理を目指しましょう。
はたLuckサービス概要資料、導入事例集

店舗サービス業向け、商業施設向け、それぞれのサービス概要資料をご用意しています。導入事例集も一緒にダウンロードが可能です。

店舗DXコラム編集部
HATALUCKマーケティンググループのスタッフが、記事の企画・執筆・編集を行なっています。店舗や施設を運営する方々向けにシフト作成負担の軽減やコミュニケーション改善、エンゲージメント向上を目的としたDXノウハウや業界の最新情報をお届けします。