離職率とは?サービス業における課題と改善策を解説

離職率の高さは、サービス業において深刻な課題となっています。人材の確保や育成にかかるコストの増大、業務効率の低下など、企業の成長を阻害する要因になることもあるでしょう。

本記事では、サービス業における離職率の現状や企業が直面する課題について解説します。離職率を改善するための具体的な対策も紹介するので、自社の人材戦略を見直す際の参考に、ぜひご覧ください。

離職率とは? 

離職率の改善を図るには、まず基本定義や離職率の種類を把握しておきましょう。

離職率の基本定義      

離職率とは、特定の期間内に企業から退職した従業員の数を、その期間の平均従業員数で割って算出される割合です。例えば1年間で10人が退職し、平均従業員数が100人だった場合、年間離職率は10%となります。

離職率は人材の流動性を定量的に把握し、人事戦略を策定する際の指標となります。

離職率の種類

離職率は算出方法や対象期間によって、いくつかの種類に分けられます。主な種類に、定期離職率、年間離職率、月別離職率があります。

定期離職率

定期離職率とは、四半期や半年といった特定の期間における離職者数を、その期間中の平均在籍者数で割ったものです。

短期的な人材の流動性を把握するのに適しており、季節変動や特定のイベントが離職に与える影響を分析するのに役立ちます。

年間離職率

年間離職率は、1年間に離職した従業員数を、その年の平均在籍者数で割ったものです。季節変動や一時的な要因による影響を平準化する指標です。

年間離職率は長期的な人材の定着傾向を把握するのに適しており、企業の年間を通じての人材戦略の効果を測定するのに役立ちます。

月別離職率

月別離職率とは、1か月間に離職した従業員数を、その月の平均在籍者数で割ったものです。短期間での人材流動性を詳細に分析する際に役立ちます。

たとえば、特定のプロジェクトの開始や終了、組織変更、新制度の導入などによる影響を把握するのに適しています。また、季節性の高い業界においては月別離職率によって離職の兆候を発見し、対策を講じることができます。

サービス業における離職率の現状          

ここでは、サービス業における離職率の現状を見ていきましょう。

業界別離職率の傾向   

サービス業は宿泊業や飲食業など多岐にわたります。業界によって特性が異なるため、それぞれに適した対策が求められます。ここでは、飲食業、小売業、宿泊業の主な3つの業界について解説します。

飲食業の離職率

飲食業は、サービス業の中でも特に離職率が高い業種として知られています。厚生労働省によると飲食業の離職率は10.9%*となっており、調査対象となった全17業種の中で最も高い数値となりました。

飲食業の離職率が高い理由としては、不規則な勤務形態や長時間労働、休日の取りにくさなどが挙げられます。特に、深夜勤務や土日祝日の勤務が多いことが、従業員の負担となっています。

小売業の離職率

小売業の離職率は飲食業ほどではないものの、一般的な企業の離職率を上回っています。厚生労働省のデータによると、卸売業・小売業の離職率は6.5%*となっています。

小売業の離職率が高い主な理由としては、顧客のクレーム対応などによるストレスや、土日出勤の多さなどが挙げられます。

宿泊業の離職率

宿泊業の離職率も飲食業と並んで高く、10.9%*となっています。

24時間体制でのサービス提供が必要となるため、夜勤やシフト勤務が多く、生活リズムが不規則になりやすいことが主な要因です。また、繁忙期には長時間労働を強いられることも、離職を促す要因となっています。

*参考:厚生労働省|産業別の入職と離職の状況

高離職率が企業にもたらす影響  

離職率が高い状態が続くと、企業は経済的な損失だけでなく、従業員のモチベーション低下などの問題を抱える可能性があります。ここでは、離職率が高いことによる影響を見ていきましょう。

経済的コスト

従業員が離職すると、新たな人材を採用するための募集や選考にコストがかかります。

さらに、新入社員が戦力となるまでは教育・研修が必要であり、その間の人件費や研修費用も企業が負担しなければなりません。これらのコストは、企業の利益を圧迫する要因となります。

業績や効率性への影響

従業員の離職は、業務の引継ぎや人員配置の変更を伴うため、業務効率が低下する可能性があります。

新たな人材が業務に習熟するまでの間、生産性が低下したり、サービスの質が低下したりするリスクも考えられます。特に、専門的な知識やスキルを持つ従業員が離職した場合、その影響は大きくなるでしょう。

社員のモチベーションとエンゲージメント

離職率が高い職場では、従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下を招くことがあります。特に、親しい同僚や尊敬する上司が離職した場合の影響は大きく、連鎖的な離職を引き起こすリスクも高まります。

離職率が高い理由      

ここからは、離職率が高くなる理由を以下の4つに分類して解説します。

  • サービス業特有の労働環境
  • 仕事内容の不満
  • 人事制度・労働環境の整備不足
  • 組織文化・マネジメントの課題

サービス業特有の労働環境      

サービス業特有の労働環境を要因とした離職の理由は、主に次の4つです。

長時間労働による負担

サービス業では、顧客対応のための残業や、店舗の営業時間や繁忙期に合わせた長時間労働が常態化する場合があります。このような状況が続くと、従業員は心身ともに疲弊してしまいます。

低賃金によるモチベーション低下

サービス業は、他の業種と比較して給与水準が低い傾向にあります。仕事内容に見合った給与が得られないと、従業員のモチベーションは低下し、より良い待遇を求めて離職する可能性が高まります。

少ない休日による生活とのバランス

土日祝日や年末年始などの繁忙期に休むことが難しく、休日数が少ない傾向にあるのもサービス業特有です。また、シフト制の場合は休日が不規則になりがちです。

このような労働環境では、従業員はプライベートの時間を確保しにくく、仕事と生活のバランスを保つことが困難になります。

顧客対応によるストレス

サービス業では、顧客対応が業務の大部分を占めます。顧客からの要望に対応することは重要ですが、中には理不尽な要求や過度なクレームをする顧客も存在します。

そのような状況が続くと、従業員は精神的なストレスを抱え込んでしまうことがあります。

仕事内容の不満        

仕事内容の不満による離職の理由には、次の3つが挙げられます。

キャリアパスやスキルアップ機会の不足

サービス業の中には、明確なキャリアパスやスキルアップの機会が提供されていない職場も存在します。従業員が自身の成長や将来の展望を描けない状況では、仕事への意欲が低下しやすくなるでしょう。

特に、若年層の従業員にとってキャリア形成の見通しが立たないことは不安要素となり、他業種への転職を考えるきっかけとなることがあります。

仕事へのやりがいの欠如

サービス業の中には、ルーチンワークが多く、創造性や自主性を発揮しにくい業務も存在します。

その結果、仕事に対するやりがいを感じにくく、モチベーションの低下につながることがあります。自身のスキルや能力を活かせないと感じる従業員は、離職を検討する場合もあるでしょう。

労働時間管理の不透明さ

労働時間の管理が不透明であることも、従業員の不満につながります。

例えば、サービス残業が常態化していたり、休憩時間が十分に確保されていなかったりするケースが挙げられます。従業員は不公平感や不満を抱きやすくなり、離職の要因となる可能性があります。

人事制度・労働環境の整備不足  

人事制度・労働環境の整備不足によって離職率が高くなる理由は、主に次の3つです。

賃金や福利厚生の不足

福利厚生が充実していないことも、離職率を高める要因です。福利厚生に対する不満が続くと、より良い待遇を求めて転職を考える従業員も少なくありません。

育児休暇や介護休暇などの制度の充実度

育児休暇や介護休暇などの制度が充実していないことも、従業員の離職につながる可能性があります。特に、女性従業員が多い職場では、出産や育児を機に退職するケースが少なくありません。

また、家族の介護が必要になった従業員が、仕事と介護の両立に悩み、離職を選択することもあります。

ワークライフバランスの推進

サービス業では、長時間労働や不規則なシフト勤務が原因で、ワークライフバランスが崩れやすい傾向があります。そのような状況が続くと、従業員は私生活との両立に困難を感じ、離職を考えるようになります。

特に、家族との時間を大切にしたい従業員や、趣味の時間を確保したい若手社員の離職リスクが高まります。

組織文化・マネジメントの課題    

組織文化・マネジメントの課題が要因となって離職率が高くなるケースには、次の3つがあります。

社員同士のコミュニケーション不足

シフト制の勤務体制の場合、同じ職場のメンバーと顔を合わせる機会が少ないことがあります。業務上の連携が取りづらく、孤立感を覚える従業員もいます。

さらに、コミュニケーションが不足していると仕事の悩みを相談しづらく、ストレスが増大する要因にもなります。

職場内の人間関係の悪化

職場の人間関係がよくないことも、離職率が高くなる大きな要因のひとつです。たとえば、上司との関係が良好ではない場合、適切な指導やサポートが受けられず負担が増大します。

また、パワーハラスメントや過度な競争意識がある職場では、精神的な負担が大きく、従業員が長く働き続けることが難しくなります。

不透明な評価制度

サービス業では評価基準が曖昧で、正当に評価されていないと感じる職場も少なくありません。

例えば、売上を上げても給与や昇進に反映されない場合、モチベーション低下につながります。また、顧客満足度などの数値化しにくい要素が評価に含まれる場合、従業員は不信感を抱くこともあるでしょう。

サービス業における離職率対策  

離職率が高くなる要因を把握できたら、自社の状況に合わせて対策を講じましょう。ここでは、以下の4つに改善策を分類し、解説していきます。

人事制度・労働環境の改善       

人事制度・労働環境の改善策には、次の4つが挙げられます。

労働時間管理の徹底

労働時間管理を徹底することで、離職率の改善につながります。従業員の労働時間や休憩時間などを正確に把握し、過重労働を防ぐ体制を構築するのが有効です。

賃金・福利厚生の充実

賃金や福利厚生が充実していると、従業員は経済的な安定と安心感を得ることができ、仕事への意欲も高まります。

例えば、住宅手当、食事補助、資格取得支援、健康診断の充実など、従業員のニーズに合わせた福利厚生を整備することが効果的です。

キャリアパス設計

キャリアパスが明確な職場では、従業員は仕事へのモチベーションを維持しやすくなります。

対策としては、昇進・昇格の基準の明確化や、スキルアップのための研修制度の導入などが考えられます。また、将来のキャリアプランを描けるように、職種転換やジョブローテーションの機会を提供することも有効です。

ワークライフバランスの推進

従業員が仕事と私生活を両立できる環境を整えることで、離職を防ぐことにつながります。

例えば、有給休暇の取得促進、フレックスタイム制や時短勤務の導入、育児・介護休業制度の整備などが挙げられます。連休取得を推奨することも有効です。

組織文化・マネジメントの改善    

組織文化・マネジメントの改善によって離職率を低減するには、次の3つがポイントです。

コミュニケーション活性化

離職率改善には、職場内での活発なコミュニケーションが不可欠です。例えば、定期的な1on1ミーティングを設けるのが方法のひとつです。

そのほか、社内SNSやチャットツールの導入も効果的です。日常的なやり取りを活性化させ、些細なことでも報告・相談しやすい雰囲気をつくると離職率低減につながります。

チームワーク向上

チームワークを強化し、協力し合える関係を築くことで、仕事へのモチベーションが高まります。具体的には、チームでのプロジェクト推進や目標の設定、情報共有の徹底などが挙げられます。

従業員エンゲージメント向上

マネジメントの改善によって、仕事に対する従業員の愛着心や貢献意欲を高めることも対策のひとつです。例えば、経営理念やビジョンの共有、公正な評価制度の確立などが考えられます。

従業員が自身の貢献を認められていると感じると、エンゲージメントが向上します。結果的に、離職を防ぐことにつながるでしょう。

シフト管理ツールの活用

シフト管理ツールは、従業員からの希望シフトの収集、シフトの共有などを簡単に行えるツールです。シフト管理ツールを活用すると、以下の4つを対策でき、離職率の改善を図れます。

シフト作成の効率化

シフト管理ツールを導入すると、従来の手作業やエクセルでのシフト作成に比べて、かかる時間や手間を大幅に削減できます。

シフト作成を効率化できると、管理者は業務の負担を軽減でき、ストレスの低減にもつながるでしょう。

従業員満足度向上

シフト管理ツールの導入によって、従業員は自身の希望シフトをツール上で簡単に提出でき、シフトの確認も容易にできるようになります。

これらの手間がかからないことは働きやすさにつながり、従業員満足度も向上しやすくなると考えられます。

勤怠管理の効率化

離職率の改善には、効率的な勤怠管理が欠かせません。

シフト管理ツールによっては、リアルタイムの出退勤記録や労働時間の自動集計などが行えます。ツールを活用することで、管理者の負担を軽減できるとともに、従業員の労働時間の適正化も図れます。

人員配置の最適化

人員配置を最適化すると、従業員の負担を軽減できるため、離職率の改善につながります。

通常、サービス業では繁忙期や閑散期、時間帯によって必要な人員数が変動しますが、シフト管理ツールを活用することで、過去のデータや予測に基づいて、適切な人員配置を計画できます。

エンゲージメントサーベイツールの活用    

エンゲージメントサーベイツールは、従業員のエンゲージメントを測定し、分析するためのツールです。エンゲージメントサーベイツールの活用で実施できる対策には、次の3つが挙げられます。

従業員の意見収集と分析

離職率改善には、従業員の声を収集し、分析することが重要です。

エンゲージメントサーベイツールは、匿名での回答が可能であり、従業員の本音を引き出すことができます。また、収集したデータは、グラフやチャートで可視化され、分析が行えます。

従業員満足度向上のための施策の立案

意見収集と分析をおこなった後は、従業員満足度向上のための施策立案に活用できます。サーベイの結果から、従業員が不満に感じている点を特定し、具体的な対策を講じましょう。

例えば、「ワークライフバランスの改善」が求められているなら、フレックスタイム制度の導入や有給休暇取得の促進を検討するといった具合です。

離職防止のための早期対策

エンゲージメントサーベイツールを活用することで、離職の予兆を早期に把握し、個別の状況に応じた対策を講じることができます。

例えば、エンゲージメントが低下している従業員に対して、個別面談や配置転換、キャリアパスの再設計などの対策を講じます。離職率の低下を図れる上に、優秀な人材の流出を防ぐことにもつながります。

離職率低下につながる「はたLuck」         

離職率低下には多くの観点から対策を講じる必要があるため、便利なツールを使うのがおすすめです。

ここでは、モチベーション向上やコミュニケーションの活性化、エンゲージメントサーベイまで行えるツール「はたLuck」を紹介します。

従業員のモチベーションアップにつながる機能を搭載

はたLuckには、従業員のモチベーション向上につながる「星を贈る」機能が搭載されています。従業員同士が感謝の気持ちを「星」という形で送れるものです。

日々の業務の中で感謝の気持ちを伝えることは、職場全体の士気を高める上で重要です。星を送られた従業員は、自身の貢献が認められたと感じ、仕事のモチベーションが向上します。

シフト希望提出・調整・管理・共有が一気通貫

はたLuckでは、シフト希望の提出から調整、管理、共有までを一元的に行えます。従業員は自身のスマートフォンから簡単にシフト希望を提出でき、管理者は提出された希望シフトを基にシフトを作成できます。

また、急な欠員が出た場合でも「はたLuck」上でヘルプ募集をかけることができ、スムーズな調整が可能です。従業員は、自身の希望が反映されやすいと感じ、エンゲージメントが向上するでしょう。

情報共有・コミュニケーション機能も

はたLuckは、情報共有やコミュニケーションを円滑にするための機能を備えています。「連絡ノート」機能では、業務連絡や申し送りなどを他のメンバーに確実に伝えることができます。

また、「トーク」機能では、従業員同士が気軽にコミュニケーションを取れるため、チーム内の連携が強化されます。

エンゲージメントサーベイ機能も活用できる

はたLuckの「エンゲージメントプログラム for Workplace」では、2か月に1度のアンケートを通じて、従業員のエンゲージメントレベルを具体的なスコアで可視化します。

さらに、マネジメントの課題や改善アクションの方向性も提示します。個々の課題に早期に対処することで、離職率の低減を図ることが可能です。

離職率対策はサービス業の成長戦略

離職率とは、一定期間内に退職した従業員の割合を示す指標です。特にサービス業では離職率が高く、企業にとって大きな課題となっています。業界特有の労働環境や低賃金などが、主な要因として挙げられます。

これらの課題を解決するには、労働時間の適正な管理やコミュニケーションの活性化が欠かせません。従業員が働きやすい環境を整えることで、定着率の向上につながります。

そこでおすすめなのが、「はたLuck」 のようなツールの導入です。はたLuckには、シフト管理だけでなく、従業員のモチベーション向上にも役立つ機能が搭載されています。離職率低減に向けた対策として、ぜひご活用ください。

はたLuckサービス概要資料、導入事例集

店舗サービス業向け、商業施設向け、それぞれのサービス概要資料をご用意しています。導入事例集も一緒にダウンロードが可能です。

店舗DXコラム編集部

HATALUCKマーケティンググループのスタッフが、記事の企画・執筆・編集を行なっています。店舗や施設を運営する方々向けにシフト作成負担の軽減やコミュニケーション改善、エンゲージメント向上を目的としたDXノウハウや業界の最新情報をお届けします。

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