
「シフトを組めるのは、結局この工場では自分しかいない」
「来週の生産量が直前まで読めず、何度も組み直している」
製造現場でシフト作成を担う方なら、こうした状況に心当たりがあるのではないでしょうか。
毎月のシフトづくりが、答えの決まらないパズルのように感じられるのは、担当者の力量不足ではなく、製造業のシフトならではの難しさのためです。
なぜ製造業のシフトはここまで難しくなるのか。そして、特定の担当者に頼らず回す仕組みをつくるには、どこから手をつければよいのでしょうか。
本記事では、製造業のシフト管理の難しさや進め方について解説します。
この記事のポイント
- 製造業のシフトが難しいのは、交替制・生産変動・多様な雇用形態という3つの要因によるもの
- 属人化から抜け出す鍵は、ルールの整理→基準の標準化→ツール活用という順序で進めること
- シフトが埋まらない根本には人手不足があり、定着支援を並行することが欠かせない
目次
製造業のシフト管理が難しい3つの理由
製造業のシフト管理が難しいのは、複雑な交替制・生産量との連動・多様な雇用形態という3つの要因が重なるためです。いずれも担当者の力量不足ではなく、業種特有の構造から生まれる課題といえます。
理由を確認していきましょう。
理由①複雑な交替制のルールに対応しなくてはならない
製造業のシフト管理が難しいのは、交替制の勤務体系のためです。
2交替や3交替だけでなく、業種や設備によっては4直3交替や5直3交替といった勤務サイクルが組まれることもあります。
例えば、5直3交替は、5つの勤務班を3つの時間帯に割り当て、設備を24時間動かし続ける勤務体系です。班の構成を一つ変えれば、勤務間隔や割増の条件も連鎖的に動きます。
この複雑な勤務体系をパズルのように組み合わせなければならないため、製造業のシフト管理は非常に煩雑なものとなります。
理由②生産量の変動にシフトを合わせる必要がある
製造業のシフト管理が難しい第二の要因は、必要な人員が生産量によって変わる点です。
製造業では、受注や生産計画に合わせて人員を決めます。直前での生産計画の変更も珍しいことではありません。その度にシフトを組み直すのは、製造業ではよく生じていることなのです。
もっとも、変動を見越して人員体制の基準を前もって決めておく工夫は、業種を問わず効果があります。
理由③雇用形態の多様化でシフトの個別条件が増える
第三の要因は、雇用形態の多様化にともなう個別条件の増加です。
正社員・パート・派遣・技能実習生が混在すると、時短勤務、夜勤不可、扶養の範囲、在留資格に伴う労働時間の上限といった条件が複雑化します。シフト作成者が複雑な条件を頭の中で処理しようとすると、組み間違いや休憩の付け忘れが起こり、労務リスクに直結します。
特に、外国籍スタッフの場合は、言語の壁の問題もあるため、正確にシフトの要望を聞き、確実に伝えることがより一層困難です。
最近では、投稿を多言語に翻訳できる連絡機能や、多言語対応の動画マニュアルを作れる機能を備えたツールも登場しています。言語の壁という課題に、こうした仕組みが役立つこともあるでしょう。
製造業のシフト管理が一人に偏る理由
製造業は管理人数が多いため、配置のルールやスキル要件が文書化されている職場も多いことでしょう。
それでもシフト作成が特定の担当者一人に集中しがちなのは、複雑なルールと現場の個別事情の両方を把握する人が、その一人に限られているためです。
「自分が休んだらシフトが回らない」という状態に、心当たりのある担当者も多いのではないでしょうか。
これは、知識と判断が一人に偏ったまま、全員で回す形になっていないことが原因といえます。
複雑なシフトルールを管理できる人が少ない
配置基準やスキル要件が文書として整理されていても、文書化されたルールに基づいてシフトを組めるかどうかは別の話です。交替制の勤務サイクル、雇用形態ごとの制約、夜勤や扶養の条件が複雑に絡み合うため、文書を読んだだけでは実際の表に落とし込めません。
全体像を理解して矛盾なくシフトを組むには、複雑なルールと現場の事情を一度に把握しておく必要があります。負荷が一人に集中したままだと、ルール自体は共有されていても、実際に運用できるのは一人だけという状態になりがちです。
現場の個別事情がルールに盛り込まれていない
シフトを組むときは、明文化されたルールだけでなく、現場ごとの事情も踏まえる必要があります。誰なら夜勤に入れるのか、どの工程に誰を入れると無理なく回るのか、といった個別の事情が、シフトの組みやすさを大きく左右します。
こうした事情は日々変わるため、全てを文書化・ルール化することは難しいものです。こうした個別事情についての情報はシフト管理者個人の記憶に頼ることになります。
特定の担当者にシフト管理業務を頼っている状態では、シフト管理の質の向上や効率化は、実現できません。次の章では、この状態から抜け出すための具体的な進め方を3つのステップで解説します。
製造業のシフト管理を効率化する3つの進め方

毎月のシフト作成に何時間も費やし、それでも組み直しが続く状況から抜け出すためのポイントは、ルールの整理、基準の標準化、ツールの活用という順序にあります。
注意したいのは、ツールの導入から手をつけると、結局は一人依存の状態に戻りやすいことです。まず土台となるルールと基準を整えてからツールを活かすことで、その効果が引き出せます。
ステップ①ルールを整理して担当者以外も使える形にする
最初の一歩は、担当者しか把握していないルールを、誰が見ても分かる形に整理し直すことです。交替パターン、必要人員、夜勤に入れない人、扶養の範囲といった条件を一覧にまとめ、ほかのメンバーにも共有して認知してもらいます。
あわせて、これまで担当者の頭の中にしかなかった現場の個別事情も書き出し、ルールに加えていきます。誰をどの工程に当てると回るのか、といった判断の根拠を言葉にしておくことがポイントです。
この作業は、Excelやスプレッドシートから始められます。最初から完璧を目指す必要はなく、1〜2か月かけて少しずつ形にしていく方針で十分です。
ステップ②ラインや拠点をまたいで基準をそろえる
複数のラインや拠点でシフトを組んでいると、書式や提出締切、配置の基準がばらつきがちです。基準がそろっていないと、全体を見比べて管理することが難しくなります。整理したルールを共通の基準にそろえることで、誰が組んでも一定の品質に近づけられます。
ここでいう標準化は、担当者から裁量を奪うものではありません。一人に集中していた負担をほかのメンバーにも分けられる状態をつくる、という意味合いです。現場の判断の余地は残しつつ、土台となる基準だけをそろえていきます。
ステップ③整理と標準化のうえでツールを活用する
ルールの整理と基準の標準化が済んだ後にツールを導入することで、ツールの機能を効果的に活用できます。
シフト管理ツールに搭載されている主な機能は、シフト希望提出のデジタル化、労務基準への適合チェック、欠員時の募集などです。交替制などの複雑なシフトルールを採用している場合でも、ツールを用いることで違反を未然に防げる可能性が高まります。
例えば、サービス業に特化した「はたLuck」のシフト管理機能には、労務ルールに反するシフトに警告が表示されます。こうした機能は、夜勤をともなう製造現場の労務管理にも通じる発想といえるでしょう。
ここまで、シフトの組み方を仕組みへ移す進め方を見てきました。
次の章では、組み方の工夫だけでは届かない、人手不足という根本の問題に目を向けます。
人手不足が深刻化したときに生じる問題

シフトの組み方をどれだけ工夫しても、そもそも人手が足りない状況が続けば、残ったスタッフの負担は増え、人員配置にも無理が生じます。
さらに、慢性的に人手不足が生じている場合、その影響はシフトが埋まらないことだけにとどまりません。
この章では、人手不足が現場に何をもたらすのかを整理します。
欠員が出ると、残った人に負担が集中する
製造業のライン作業では、一人の欠員がその担当範囲だけにとどまらず、前後の工程にも影響しやすいという特徴があります。
急に欠員が生じて補充がうまくいかない場合には、残った人の稼働を伸ばしたり、一人ひとりが負担をわけ合ったりしてカバーすることになるでしょう。最悪の場合はラインの稼働に影響が生じる事態にもつながりかねません。
慢性的な人手不足のもとでは、この「欠員の穴埋め」が常態化します。誰かが欠けるたびに残った人へしわ寄せがいき、その負担がさらに次の欠員を招きかねません。
負担が続くと離職が増え人手不足が深刻になる
欠員のしわ寄せで稼働時間が延びたり、無理に効率を上げて働く状態が常態化したりすると、現場のスタッフは少しずつ疲弊し、やがて辞めていきます。一人辞めれば残った人へのしわ寄せがさらに増し、人が足りないから負担が増え、疲れて辞め、もっと人が足りなくなるという悪循環に陥りやすくなります。
シフトを組む側も、毎月の調整に追われて消耗していきます。人手不足は一度始まると、現場の努力だけでは抜け出しにくい構造になっていきます。
法令違反が起きやすくなる
欠員を埋めるために勤務時間を延ばしたり、休憩や法定休日を削ったりして無理にシフトを組むと、法令違反が起こりやすくなります。具体例としては、時間外労働の上限超過、休憩の付け忘れ、法定休日割れなどです。
特に交替制や夜勤のある製造現場では、変形労働時間制のもとで勤務間インターバルや深夜割増の管理も関わってきます。人手不足のなかで無理な穴埋めを重ねると、管理が追いつかず、36協定で定めた上限を超える時間外労働や、休憩・休日に関する労働基準法上のルールへの抵触につながりかねません。人手不足は現場が回らなくなるだけでなく、組む側を思わぬ法令違反のリスクにさらします。
参考:厚生労働省「労働時間・休憩・休日関係」
このように、人手不足は負担の集中から離職、法令違反まで連鎖していきます。
次の章では、この根本に向き合うために、人が辞めにくい環境をどのように整えるかを見ていきます。
定着を支える仕組みが人手不足の解決につながる
人手不足を和らげるには、人が辞めにくい環境を整えることが欠かせません。
採用で人を増やすだけでは、退職のペースに追いつかないことも多いためです。
今いる人に長く働いてもらうという視点を持つことが、結果としてシフトの安定につながります。ここでは、定着を支える解決策を見ていきます。
働きやすい環境が定着とシフトの安定につながる
シフト管理を安定させるには、人が辞めにくい環境を整えることです。
人が辞めにくい環境の具体例は、働きにくさの改善や孤立感の解消などです。
職場の情報共有や現場のコミュニケーションといった働きやすさを支える取り組みが、離職を防ぐ上で効果を発揮します。日々の連絡がきちんと行き届き、一人ひとりが孤立せずに働ける状態は、それだけで職場にとどまる理由になります。
労働人口の減少が続く現在、人手不足を新規採用で補うのは難しくなってきているからこそ、「今いる人に長く働いてもらう」という視点が重要になります。
福利厚生が人材定着を後押しする
福利厚生が定着につながるのは、従業員が「会社に大事にされている」という実感を持てるからです。福利厚生は、「この会社で働き続けたい」と思える理由のひとつになります。
例えば、従業員のスマートフォンで日常的に使える福利厚生サービスとして、はたLuckの 「はたLuckベネフィット」があります。はたLuckベネフィットは、全国10万店舗以上のコンビニやカフェ、飲食店などで使える割引クーポンを、従業員のスマートフォンに届けるアプリです。
大切なのは割引そのものよりも、会社が従業員を気にかけているというメッセージが日々伝わることです。そうした積み重ねが定着を支え、ほかの職場との違いにもつながっていきます。
詳しいサービス内容や料金は、資料でご確認いただけます。
製造業のシフト管理に関するよくある質問
ここまでの内容に加えて、製造業のシフト管理でよく寄せられる疑問を整理します。本文では触れることができなかった内容も含め、3つの質問にお答えします。
製造業のシフト管理は何から始めるべきですか?
ツールの導入よりも先に、シフト作成のルールを書き出して整理することから始めるのが有効です。
担当者の頭の中にある暗黙のルールを残したままツール化すると、結局はその担当者しか使いこなせず、一人依存の状態に戻りやすくなります。ルールの整理、基準の標準化、ツールの活用という順序で進めると、特定の担当者に頼らない形が定着しやすくなります。
交替制のシフトはどう管理すればよいですか?
勤務サイクル、勤務間インターバル、深夜割増といったルールを明文化し、誰もが見える形にしておくことが重要です。
交替制は勤務の組み合わせが複雑で、判断の材料が共有されていないと、一人の担当者しか組めない状態になりがちです。
まず勤務パターンを固定的なルールとして整えたうえで、ツールで支える流れにすると、運用が安定しやすくなります。
勤怠システムを入れ替えずに改善できますか?
既存の勤怠システムはそのままに、シフトに特化したツールを連携させて改善する方法があります。
シフト管理と勤怠管理は役割が異なり、シフトは「これからの予定を組む」もの、勤怠は「実際の打刻を記録する」ものです。
両者を連携させれば、予定と実績を突き合わせられるため、すでに使っている勤怠の仕組みを活かしながらシフト作成の部分だけを見直せます。
まとめ
製造業のシフト管理が難しいのは、交替制や生産変動、多様な雇用形態といった固有の要因が重なるためで、担当者個人の力量の問題ではありません。ルールの整理、基準の標準化、ツールの活用という順序で、誰が担当しても回る形へ移していくことが解決の糸口になります。
あわせて、シフトが埋まらない根本にある人手不足にも目を向け、定着を支える取り組みを並行することが欠かせません。これらは目先のコストではなく、これからの現場を支える投資といえます。
従業員の定着には、働きやすい環境づくりや日々のコミュニケーションに加え、福利厚生のように暮らしを支える仕組みも有効です。従業員が日常的に利用しやすい福利厚生サービスを探している方は「はたLuckベネフィット」のサービスをぜひご覧ください。

店舗DXコラム編集部
HATALUCKマーケティンググループのスタッフが、記事の企画・執筆・編集を行なっています。店舗や施設を運営する方々向けにシフト作成負担の軽減やコミュニケーション改善、エンゲージメント向上を目的としたDXノウハウや業界の最新情報をお届けします。
