雇用保険の加入条件完全ガイド|パート・アルバイトの適用基準と実務のポイント

雇用保険は、労働者が失業した際の生活保障や、雇用の安定を図るための重要な社会保障制度です。本記事では、雇用保険の加入条件について、特にパート・アルバイトの適用基準や注意点について詳しく解説していきます。

目次

雇用保険とは?基本をわかりやすく解説

まず、雇用保険の基本について見ていきましょう。

雇用保険の目的と役割

雇用保険は、労働者が失業した際の生活保障や、再就職支援を目的とした社会保険制度です。具体的には、失業給付の支給や、再就職支援、能力開発支援などを通じて、労働者の生活と雇用の安定を確保する役割を担っています。また、企業の雇用維持や労働者の雇用継続を支援する制度としても機能しています。

雇用保険が従業員・雇用主双方にとって重要な理由

雇用保険は従業員と会社の双方にとって大きなメリットがある制度です。従業員の立場からすると、万が一失業してしまっても、失業給付を受けながら次の仕事を探すことができるため、生活の心配をせずに求職活動に専念できます。

また、キャリアアップのための職業訓練費用の支援や、子育て中の方への育児休業給付金など、さまざまな支援を受けることが可能です。

一方、雇用主にとっても、従業員の雇用を維持するための支援を受けられるといった利点があります。雇用保険に加入している会社は福利厚生が充実していると求職者から評価され、優秀な人材の採用がしやすくなります。さらに、従業員も安心して長く働き続けることができるため、離職の防止にもつながるでしょう。

保険料の負担割合 

雇用保険料は、雇用主と従業員で分け合って負担する仕組みになっています。一般的な雇用保険料の負担割合は、以下の通りです。

業種全体の保険料率会社負担従業員負担
一般の事業14.5%9%5.5%
農林水産・酒造業16.5%10.0%6.5%
建設業17.5%11.0%6.5%

参考:令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内

従業員の負担分は毎月の給料から自動的に天引きされ、雇用主の負担分と合わせて会社が納付します。雇用保険料は、会社の負担がおよそ6割、従業員の負担がおよそ4割の割合となっており、失業時の給付や雇用の安定のための制度を支えています。

サービス業における雇用保険の重要性

サービス業では、パートやアルバイトなどの非正規雇用が多いため、雇用保険の重要性が特に高いと言えます。労働時間や雇用期間が短い従業員でも、一定の条件を満たせば加入できるため、従業員の生活保障や雇用の安定性にプラスの効果をもたらすでしょう。

雇用保険の加入条件

雇用保険の加入条件は、労働者の雇用形態や労働時間、雇用期間などによって定められています。

基本的な加入要件

雇用保険の基本的な加入要件は以下のとおりです。

・31日以上の雇用見込みがあること ・週の所定労働時間が20時間以上であること ・学生でないこと(一部例外あり)

これらの条件を満たす労働者は、原則として雇用保険に加入する必要があります。

労働時間による基準

週の所定労働時間が20時間以上であることが、雇用保険加入の基準となります。この基準は、実際の労働時間ではなく、労働契約で定められた所定労働時間に基づいて判断されます。変形労働時間制を採用している場合は、年間の平均で週20時間以上となることが必要です。

雇用期間による基準

雇用見込み期間が31日以上であることも、加入条件の一つです。短期的な雇用契約であっても、更新により31日以上の雇用が見込まれる場合は、加入対象となります。季節労働者など、一時的な雇用であっても、この基準を満たせば加入が必要です。

賃金による基準

賃金に関する具体的な最低基準は設けられていませんが、労働の対価として賃金が支払われることが前提となります。そのため、賞与や手当などの諸手当も含めた総支給額が対象です。

年齢による制限

2017年の雇用保険法改正により、年齢制限が撤廃され、65歳以上の労働者も加入対象となりました。企業は、雇用保険の加入条件(週の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みなど)を満たす労働者を、年齢に関係なく加入させる義務があります。

また、65歳前から継続して雇用されている場合は、特別な手続きなしで引き続き適用されます。ただし、定年後に勤務形態が変わり短時間勤務になると、所定労働時間の基準を満たさない可能性があるため、注意が必要です。

外国人労働者の加入条件

国籍を問わず外国人労働者は、日本人労働者と同様の条件で雇用保険に加入する必要があります。ただし、留学生のアルバイトなど、一部の在留資格では異なる扱いとなる場合があるため、事前に確認しておくことが大切です。

パート・アルバイトの雇用保険加入

ここでは、パート・アルバイトの雇用保険について見ていきましょう。

短時間労働者の適用基準

パートやアルバイトなどの短時間労働者についても、一定の要件を満たせば雇用保険への加入が必要です。適用基準は正社員と基本的に同じですが、以下の労働時間や雇用期間については特に気をつけなくてはなりません。

週所定労働時間の要件

短時間労働者の場合も、週20時間以上という基準は変わりません。ただし、シフト制で勤務する場合は、月間の所定労働時間を週平均に換算して判断されるため、繁閑の差が大きい業態では、この換算作業が重要になります。

月額賃金の要件

短時間労働者の雇用保険加入に関して、特定の月額賃金の要件は設けられていません。ただし、労働の対価として適切な賃金が支払われていることが前提となります。

複数の事業所で働く場合の取り扱い

労働者が複数の事業所で働いている場合、それぞれの事業所での労働時間が週20時間未満であっても、合算して週20時間以上となるケースがあります。この場合、各事業所での雇用保険の取り扱いが問題となりますが、原則として主たる賃金を受ける事業所で加入することになります。

学生アルバイトの特例

一般的に、学生は雇用保険の加入対象外とされています。ただし、以下のようなケースは例外的に加入が認められることがあります。

・卒業見込みの学生で、卒業後も同じ事業所で継続して働く予定がある場合 ・夜間学校や通信制の学生で、主に労働に従事している場合

雇用保険の加入手続きの流れ

ここでは、雇用保険の加入手続きの流れについて見ていきましょう。

必要書類の準備

雇用保険の加入手続きには、雇用保険被保険者資格取得届や本人確認書類、労働条件通知書などの書類が必要です。事業主は、これらの書類を漏れなく準備する必要があります。

手続きの期限

加入手続きは、労働者を雇用した日の翌日から起算して10日以内に行わなくてはなりません。期限を過ぎた場合でも手続きは可能ですが、できるだけ早期に手続きをすることをおすすめします。

提出先と方法

手続きは、事業所の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)で行います。電子申請システムを利用することで、オンラインでの手続きも可能です。

雇用保険に関する注意点

雇用保険に関する注意点は、以下の通りです。

従業員の加入状況の管理方法

従業員の雇用保険加入状況を適切に管理するためには、労働時間や雇用期間を正確に把握することが欠かせません。特に、パートやアルバイトの場合は、労働時間の変動に注意が必要です。

労働時間の適切な把握

従業員の労働時間を適切に把握するためには、タイムカードやICカード、勤怠管理システムなどを活用し、正確に記録することが大切です。特に、変形労働時間制を採用している場合は、週平均の労働時間の適切な計算が求められます。

雇用保険に関する帳簿書類の管理

雇用保険関係の帳簿書類は、法定保存期間である4年間の保管が必要です。被保険者資格取得届や喪失届の控え、賃金台帳などを適切に保管しましょう。

試用期間中の扱い

試用期間中であっても、雇用保険の加入要件を満たす場合は、加入手続きが必要です。試用期間の有無にかかわらず、雇用開始日から被保険者となります。

遡及適用

加入要件を満たしているにもかかわらず未加入であった期間がある場合、遡って加入手続きを行わなくてはなりません。この場合、未納の保険料も併せて納付することになります。

違反した場合の罰則

雇用保険法に違反した場合、罰則が科される恐れがあります。例えば、届出義務違反や虚偽の届出を行った場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金*に処されます。

*参考:労働新聞社

雇用保険加入状況の管理を効率化する方法

雇用保険加入状況の管理を効率化する方法には、主に以下の3つがあります。

シフト管理・勤怠管理システムの導入

シフト管理や勤怠管理をシステム化することで、労働時間の把握や保険料の計算が効率化されます。特に、パートやアルバイトが多い職場では、システムの導入が有効です。

シフト作成時の注意点

シフトを作成する際は、雇用保険の加入要件を考慮する必要があります。週20時間以上という基準を意識しながら、適切なシフト配分を行いましょう。

人事労務担当者の負担軽減

システムの導入により、手作業での計算や書類作成の手間が軽減されます。また、エラーのリスクも低減され、より正確な管理が可能です。

雇用保険に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、雇用保険に関するよくある質問を5つ取り上げてみました。

Q1. 週20時間未満のパートは雇用保険に加入できますか?

週20時間未満の労働者は、原則として雇用保険の加入対象とはなりません。ただし、労働時間が増加して週20時間以上となった場合は、その時点で加入が必要となります。

Q2. 試用期間中の従業員も雇用保険に加入できますか?

試用期間中であっても、雇用保険の加入要件(週20時間以上の労働時間、31日以上の雇用見込み期間)を満たす場合は、加入が必要です。雇用形態や試用期間の有無は、加入の判断に影響しません。

Q3. 雇用保険料はいつから発生しますか?

雇用保険料は、被保険者資格を取得した月から発生します。月の途中で雇用された場合でも、その月の初日に遡って保険料が発生します。

Q4. 退職後、雇用保険はいつまでもらえますか?

失業給付(基本手当)の給付日数は、離職理由や被保険者であった期間、年齢などによって異なります。一般的には90日から360日の範囲で設定されています。

Q5. 副業をしている従業員の雇用保険はどうなりますか?

複数の事業所で働く場合、原則として主たる賃金を受ける事業所で雇用保険に加入します。ただし、それぞれの事業所での労働条件によって判断が異なる場合があるため注意が必要です。

労働時間を把握しやすくするシフト管理ツール「はたLuck」

雇用保険や労働時間の管理については多くの課題が存在しますが、シフト管理アプリ「はたLuck」を活用することで、これらの課題を効率的に解決できます。

パート・アルバイトの希望に応じたシフトが組める

はたLuck のシフト作成機能を使えば、シフトの回収から作成・確定までをスムーズに行えます。シフト希望はスタッフが自分のスマートフォンから入力するため、回収の手間がかかりません。期限までに未提出のスタッフにはアラートが届くため、個別連絡の必要もなくなります。

回収されたシフト希望は、シフト作成ツールに自動的に反映されるため、転記は不要、転記ミスもなくなります。また「適正シフト機能」を使えば、店舗別・曜日別・ポジション別などで適正な人数のスタッフを手軽に配置できます。人件費の算出機能や、労働基準法に違反するシフトを組むとアラートを出す機能も搭載されているので、安心してシフトを作成できるのがポイントです。

パート・アルバイトとのコミュニケーションツールも搭載

はたLuckの「トーク機能」は使い慣れた私用SNSと操作性が似ているため、ストレスなく利用できます。また、特定のメンバーとのグループ会話が可能であり、連絡事項や重要な情報などを気軽にやり取りできるため、店長とSV間でコミュニケーションを取る際にも活用できます。

パート・アルバイトの属性に従って設定できる労務アラート機能も使える

はたLuckの「労務アラート機能」は、労働基準法や就業規則に違反するシフトが組まれそうになった際に警告を発する機能です。

例えば、連続勤務日数の上限や休憩時間の確保、深夜労働の制限などをチェックし、問題がある場合にアラートを出します。法令遵守が容易になり、労務におけるリスクを大幅に軽減できます。

雇用保険の加入条件を把握するためにシフト管理ツールを導入しよう

雇用保険の適切な管理を行うためには、従業員一人ひとりの労働時間を正確に把握することが欠かせません。特にパートやアルバイトが多い職場では、頻繁なシフト調整や、月ごとの労働時間の変動などが想定されるため、手作業での管理は非常に大変です。

そこで、従業員の労働時間の把握が容易にできる、シフト管理ツールの導入をおすすめします。シフト作成や変更の手間も大幅に削減できるほか、労働時間が基準を超えそうな従業員を事前に把握できるため、法令遵守の面でも安心です。

より確実な法令遵守と効率的な労務管理を両立させるためにも、ぜひシフト管理ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

はたLuck シフト管理機能概要資料

シンプルで使いやすいUIで、シフト申請・調整・確定・確認の全ての業務が管理可能です。他にも売上予測に基づいた適正シフトや近隣店舗と人材シェアが可能なヘルプ募集機能など豊富な機能をご用意しています。

店舗DXコラム編集部

HATALUCKマーケティンググループのスタッフが、記事の企画・執筆・編集を行なっています。店舗や施設を運営する方々向けにシフト作成負担の軽減やコミュニケーション改善、エンゲージメント向上を目的としたDXノウハウや業界の最新情報をお届けします。

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