
「スタッフの満足度を上げたいが、それが本当に業績に結びつくのか」
そう感じている現場担当者・店長の方は少なくないでしょう。
ES(従業員満足度)向上は「感情論」だという印象を持たれることもありますが、実際には複数の統計データが、ESと生産性・業績の明確な相関を示しています。
本記事では、ESと生産性の相関を裏付けるデータを整理したうえで、なぜESが上がると生産性も向上するのかというメカニズムを解説します。
そのうえで、サービス業の現場担当者がすぐに始められる3つの向上策を紹介します。
飲食業・小売業・宿泊業など、パート・アルバイトスタッフが多い現場で特に参考になる内容です。
目次
従業員満足度と生産性の相関とは?統計・データで見るESと業績の関係
ESと生産性・業績には明確な相関があることが、国内外の複数の調査から明らかになっています。
まずはデータで実態を把握しておきましょう。
ESが上位の職場は生産性が14%高い
ギャラップのメタ分析(State of the Global Workplace 2024)によると、エンゲージメントが上位25%の事業部門は、下位25%と比べて売上が18%高く、生産性は14%高いことが示されています。
エンゲージメントはESと密接に関連する概念であり、職場への満足感が高いほど生産性も上がるという関係が数値で確認されています。
一方、日本の従業員エンゲージメント率はわずか6%と世界最低水準(ギャラップ調査)にあります。
これは裏を返せば、サービス業においてES改善の余地が極めて大きく、取り組む企業が競合に対して優位性を発揮できることを意味します。
ESと利益・顧客満足度の相関関係
厚生労働省「取り組みませんか?『魅力ある職場づくり』で生産性向上と人材確保」によると、直近5年間で売上高が増加したと回答した企業の割合は、CSのみを重視する企業が48.2%だったのに対し、ESとCSの両方を重視する企業では57.1%に上りました。
このデータはESに投資することが業績に直結することを意味し、ESを「スタッフへの配慮」ではなく「業績向上のための経営投資」として捉えることの重要性を示していると言えます。
ESとCSは互いを高め合う関係にあり、職場への満足が高いスタッフが高品質なサービスを提供し、顧客満足が上がり、業績が向上するというサービスプロフィットチェーン(SPC)の好循環につながります。
▼関連記事:サービスプロフィットチェーン(SPC)とは?
従業員満足度が高いと生産性が上がる2つの理由
ESと生産性の相関には、感情論ではなくロジカルな理由があります。
従業員満足度が高いと生産性が向上する3つの理由をお伝えします。
①ESが高いと経験豊富なスタッフが定着し、現場の習熟度が高まるから
ESが高い職場は離職率・欠勤率が低く、経験豊富なスタッフが定着します。
厚生労働省「令和6年雇用動向調査」でも示されているように、サービス業では離職率の高さが慢性的な課題です。
採用・教育・引き継ぎにかかる直接コストに加え、既存スタッフへの負荷増大や生産性低下といった間接コストまで含めると、1人の離職が企業にもたらす損失は数百万円規模に達することも珍しくありません。
ベテランスタッフが現場に残ることで、業務効率と顧客対応の品質が維持されます。
また新人教育の負担も減り、既存スタッフが本来の業務に集中できる環境が整います。
ESの向上は単に「働きやすい職場をつくる」ことではなく、現場の生産性を底上げするための投資です。
②ESの向上がスタッフのモチベーションの向上につながる
ハーズバーグの二要因理論では、仕事に関する要因を「衛生要因」と「動機づけ要因」の2種類に分けて考えます。
給与・職場環境・人間関係などの「衛生要因」が整うと一定の不満は解消されますが、満足にはつながりません。
生産性の向上には、達成感・成長機会・承認されている実感・仕事の意義といった「動機づけ要因」が必要です。
「不満の解消(衛生要因の整備)」と「やりがいの醸成(動機づけ要因の強化)」を両輪で進めることでESが向上し、スタッフのモチベーションにつながり、業務の生産性が高まります。
サービス業の現場に置き換えると、「シフトが公平でコミュニケーションが取りやすい環境(衛生要因)」を整えたうえで、「自分の接客が顧客に喜ばれる実感・スキルアップの機会(動機づけ要因)」を提供することが有効です。
関連記事:【担当者必見】サービス業の従業員モチベーション向上施策15選
サービス業でESと生産性を同時に高める3つの向上策

データでESと生産性の相関を確認した次のステップは、実際に何をするかです。ここではサービス業の現場にフィットした3つの向上策を紹介します。
【向上策①】定期的なESサーベイで現場の課題を数値化・見える化する
ES向上の第一歩は「現状の数値化」です。
アンケートやサーベイを定期的に実施して離職の予兆を早期発見し、優先課題に絞って改善を進めることが、限られたリソースで成果を出す鍵になります。
NTTコムオンラインの調査(2024年)によると、ES調査を実施している企業の割合は68.9%に上り、実施企業の83.9%が継続の意向を持っています。
また、年複数回実施する企業の割合も増加傾向にあります。
現場の変化を素早く捉えるには、年1回の大規模調査よりも短時間・高頻度のパルスサーベイとの組み合わせが効果的です。
現場のESサーベイをアプリで手軽に実施・集計したい方ははたLuckのエンゲージメント機能がおすすめです。
【向上策②】シフト・業務管理のデジタル化でスタッフの働きやすさを高める
シフトの不公平感や非効率な手作業は、ES低下の直接的な原因となります。
「希望が通らない」「特定の人に仕事が集中する」という不満が解消されるだけで、スタッフの満足度は大きく改善します。
デジタルツールの導入でシフト管理・連絡・事務作業を効率化することで、スタッフの体力的・精神的負担が軽減し、本来業務への集中度と満足度が同時に向上します。
小さな業務改善への投資がES・生産性の向上に直結するという投資対効果の観点で、優先度の高い施策のひとつです。
▼関連記事:シフト管理はシステム活用がベスト!メリットと選び方を解説
【向上策③】コミュニケーション強化と成長機会の提供でエンゲージメントを高める
スタッフが「自分の意見が職場づくりに活きている」「ここで成長できる」と実感できる職場は、エンゲージメント・定着率・生産性が向上します。
自分の声が反映されているという実感や成長実感を感じさせるための施策として、意見交換の場としてのミーティングを定期的に行ったり、サンクスカードを導入したり、業務に活かせる資格の取得支援をしたり、キャリアステップを明記したりといった施策が考えられます。
「現場の意見を聞いてくれる」、「自分のやったことが認められる」という実感や、「次はここを目指そう」という目標が、日々の業務におけるモチベーションを高め、結果的にエンゲージメントが高まります。
サービス業におけるES向上と生産性向上の事例
ESを高めた結果として離職率が下がり、スタッフの稼働効率が上がったという事例を簡単にご紹介します。
シフト管理のデジタル化により特定スタッフへの業務集中が解消された飲食店では、スタッフの不満が減少し、接客品質の向上と顧客満足度の改善につながりました。
また、アンケート機能を活用して離職予兆を早期把握し、フォローアップにつなげた宿泊施設では、離職率の改善と採用コストの削減が確認されています。
「ESを高めたら生産性も上がった」という変化は、仕組みとして継続することで初めて生まれます。
自社に近い業種の詳しい事例は下記の導入事例一覧からご確認ください。
まとめ|従業員満足度と生産性の相関を活かした業績改善のはじめ方

従業員満足度と生産性は相関関係にあり、ESを高めることは業績向上への投資とも言えます。
生産性向上につながるESの高め方は、「不満の解消(衛生要因の整備)」と「やりがいの醸成(動機づけ要因の強化)」の両輪で進めることです。
まずは現場の声に耳を傾け、業務負担が大きい部分はどこなのかを見極め、並行してESサーベイでスタッフの内面的な現状を数値化し、優先度の高い課題から改善サイクルを回し始めることが最初の一歩です。
完璧な施策を用意してから動くのではなく、小さな改善を素早く実行し、スタッフに見える形でフィードバックする繰り返しが、ESと生産性の向上につながります。
はたLuckでは従業員満足度と生産性の向上の両方を実現するためのサービスを提供しています。
業務効率を上げるための根本的な課題がどこにあるのかを明確にし、適切に課題にアプローチしていく設計になっているため、ぜひ一度ご相談ください。
この記事の監修

滝澤美帆
学習院大学 経済学部 教授
専門はマクロ経済学・生産性分析・データ分析。2008 年一橋大学博士(経済学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、東洋大学、ハーバード大学国際問題研究所日米関係プログラム研究員などを経て、2019 年学習院大学准教授。2020 年より現職。現在、産業構造審議会、中小企業政策審議会など複数の中央省庁委員や東京大学エコノミックコンサルティング㈱のアドバイザー、企業の社外取締役を務める。
著書に『グラフィックマクロ経済学第3版(宮川努氏・外木暁幸氏との共著)』(新世社)などがある。

店舗DXコラム編集部
HATALUCKマーケティンググループのスタッフが、記事の企画・執筆・編集を行なっています。店舗や施設を運営する方々向けにシフト作成負担の軽減やコミュニケーション改善、エンゲージメント向上を目的としたDXノウハウや業界の最新情報をお届けします。
