eNPSとは?測定方法やメリット・デメリット、導入事例を紹介

近年、企業の成功に不可欠な要素として従業員エンゲージメントが注目を集めています。その中で、eNPS(Employee Net Promoter Score)が新たな指標として台頭してきました。

本記事では、eNPSの概念から測定方法、メリット・デメリット、さらには実際の導入事例まで、包括的に解説します。

目次

eNPSとは

eNPSとは「Employee Net Promoter Score(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の略称であり、従業員の会社に対する推奨度を測定する指標を指します。

アメリカのコンサルティング会社として知られる「ベイン・アンド・カンパニー」が開発したNPS®を、Appleが従業員向けに転用したことをきっかけに広がったとされています。

eNPSが注目される背景

近年、従業員の満足度や帰属意識が企業の成長に大きな影響を与えることが明らかになってきました。従来のES(従業員満足度)調査もeNPS調査も基本的な目的自体は変わりませんが、eNPS調査の方が従業員の本音を引き出しやすく、最低2問から調査できる点で注目を集めています。

eNPSと従業員エンゲージメントとの関係

eNPSは従業員エンゲージメントと密接な関係があります。高いeNPSスコアは、従業員が会社に対して強い帰属意識や愛着を持っていることを意味します。

離職率との関係

eNPSと離職率には強い相関関係があります。eNPSが高い企業ほど、従業員の定着率が高い傾向にあります。これは、従業員が第三者に会社を推奨したいと感じるほど、その会社で働き続けたいという意思が強いことを示しています。

離職率の低下は、採用コストの削減はもちろん組織の安定性向上にもつながり、企業の持続的成長を支える重要な要素となるでしょう。

生産性の向上

高いeNPSスコアは、従業員の生産性向上にも役立ちます。

会社を推奨したいと感じる従業員は、自身の仕事に対してより高いモチベーションを持ち、積極的に業務に取り組む傾向があります。個人の生産性が上がるだけでなく、チーム全体のパフォーマンスも改善され、組織全体の生産性向上につながります。

社内コミュニケーションの変化

eNPSの向上は、社内コミュニケーションの活性化にも影響を与えます。

従業員が会社に対して好意的な感情を持つほど、同僚や上司とのコミュニケーションが活発になり、建設的な意見交換が増えるでしょう。組織全体の情報共有が促進されるほか、問題解決のスピードが向上するなど、さまざまな効果が期待できます。

eNPSと顧客満足度との関係

eNPSは、単に従業員の満足度を測るだけでなく、顧客満足度とも密接な関係があります。

顧客ロイヤルティの関連性

eNPSの高い企業は、顧客ロイヤルティも高い傾向にあります。

従業員が自社に誇りを持ち、熱意を持って仕事に取り組むことで、顧客に対してより質の高いサービスを提供することができます。顧客満足度が向上し、リピート率や顧客生涯価値の増加にもつながるでしょう。

顧客のリファラル採用

eNPSの高い企業では、リファラル採用も増加する傾向があります。

リファラル採用とは従業員に紹介してもらった人材を採用することを言います。エンゲージメントの高い従業員に紹介してもらうことで自社に適した人材を獲得しやすくなるでしょう。

質の高い人材の獲得が容易になれば、さらなる組織の成長につながる好循環が生まれます。

eNPS導入のメリット

eNPSを導入すると、さまざまなメリットが得られます。ひとつずつ見ていきましょう。

従業員エンゲージメントを可視化できる     

eNPSは従業員エンゲージメントを数値化し、可視化できるツールです。

従業員満足度調査では「〜が適切だと思いますか?」など漠然とした質問となりがちで、直感的に理解しやすい指標を作るのが難しいとされていました。その点、eNPSの質問項目は具体的なイメージが湧きやすく、より本音をつかみやすいといえるでしょう。

改善点の特定に役立つ

eNPSでは、数値化されたデータをもとに、従業員が何を評価し、何に不満を感じているのかを具体的に把握することが可能です。組織の弱みや強みを特定し、優先的に取り組むべき課題に対して最適な改善策を立てることができます。

従業員とのコミュニケーションを促進できる 

eNPSの導入は従業員と経営陣とのコミュニケーションを促進するツールとしても有効です。定期的な調査実施と結果のフィードバックを通じて、従業員が自分たちの声が経営陣に届いていることを実感できるでしょう。

業績向上にもつながる

eNPSを正しく把握し、改善策を講じることで、最終的に企業の業績向上も期待できます。従業員のエンゲージメントが高まれば高まるほど生産性が高まり、企業の競争力強化と持続的な成長にもつながるでしょう。

eNPS導入のデメリット

eNPSはメリットがある一方で、以下のデメリットもあります。詳しく見ていきましょう。

シンプルな指標であるがゆえに、 詳細な分析が難しい

eNPSの最大の強みなのがシンプルさであるものの、従業員満足度や組織の課題をさまざまな視点で分析することが難しいケースもあります。

たとえば、eNPSが低い要因が給与や職場環境であれば、さらに追加の調査や分析が必要となるでしょう。必要に応じて適切に対応することで効果的にeNPSが活用できます。

回答に偏りが出る可能性がある

eNPSの測定では、回答者の一時的な感情に左右されることも多く、回答に偏りが出るケースも少なくありません。たとえば、回答直前に心理的に影響を及ぼすような出来事があると、ネガティブな回答になることもあるでしょう。

また、匿名性が確保できていない場合、従業員が本音を回答しにくく、正確な結果が出なくなる恐れがあります。

継続的な調査が必要

eNPSは一回の測定だけでは、十分なデータを把握するのは困難といえます。組織の状態を正確に把握し、改善の効果を測定するためには、定期的かつ継続的な調査が必要です。

ただし、頻繁な調査は従業員の負担になる恐れがあるため、適切な実施頻度を見極めることが求められます。

eNPSの測定の流れ

eNPSの測定の流れは、一般的に以下のとおりです。

調査の頻度を決める

eNPS調査の頻度は、組織の特性や目標に応じて適切に設定することが大切です。一般的には、四半期ごとや半年に1回程度の実施が推奨されています。

定期的な測定により、従業員エンゲージメントの変化を継続的に追跡し、施策の効果を評価することが可能です。調査頻度を決める際は、組織の規模、業界の特性、従業員の業務サイクルなども考慮に入れ、最適な間隔を見つけるようにしましょう。

質問項目を設定する

eNPS調査の核となる質問は「自社を友人や家族に勧めるか」ですが、より深い洞察を得るために追加の質問を設定することが有効です。

たとえば、回答理由を尋ねたり、職場環境や業務内容に関する具体的な質問を加えたりすることで、より詳細な情報を収集できるでしょう。

ただし、質問数が多すぎると回答率が下がる可能性があるため、5〜10問程度に抑えることをおすすめします。また、質問内容は明確で簡潔なものにし、従業員が率直に答えやすい内容にすることを心がけましょう。

組織の課題や目標に合わせて質問を設計し、定期的に見直すことで、より有意義な結果を得ることができます。

回答の匿名の確保方法を決める

匿名性の確保は、従業員が正直な回答をするために不可欠です。そのため、回答者の属性情報(部署や役職など)を収集する場合は、個人が特定されないレベルにとどめる必要があります。

事前に従業員には匿名性が保証されていることを明確に伝えるほか、データの取り扱いや保管方法についても明確なガイドラインを設けることが大切です。

結果の分析手法を決める

eNPSスコアの算出後は、より詳細な分析を行うことで有益な洞察が得られます。部署別、役職別、勤続年数別などの属性ごとの比較分析や、過去のスコアとの経時的な比較を行うことを意識しましょう。

また、統計的手法を用いて、eNPSと他の指標(離職率や生産性など)との相関関係を調べることで、より深い理解が得られます。分析結果は経営陣や人事部門と共有し、具体的な改善策の立案につなげることが大切です。

eNPS計算に影響する要因

eNPSを計算する際、小規模な組織や部門では、少数の回答が全体のスコアに大きな影響を及ぼす恐れがあります。

また、日本人は中間的な選択肢を好む傾向にあり、4~6点の中間スコアを選びがちです。そうすると、eNPSの値がマイナスになるケースも少なくありません。

もし、eNPSが業界別の平均値と照らし合わせて著しく低い場合は、より詳細な調査・分析を行う必要があります。

eNPSの具体的な活用方法

eNPSの測定結果を効果的に活用するためには、具体的なアクションプランが必要です。ここでは、eNPSを組織改善に活用する方法について、詳しく解説します。

eNPSを活用した人事評価の見直し

eNPSの結果をもとに、従業員のモチベーション向上を目的とした人事評価の見直しを行いましょう。

たとえば、eNPSスコアの向上を組織の重要業績評価指標(KPI)の一つとして設定し、全社的な目標として掲げることによって、従業員エンゲージメント向上への取り組みを促進できます。

eNPSを使った組織改善施策     

eNPSの結果をもとに、具体的な組織改善施策を立案・実行することが重要です。例として、取組みの一例を挙げてみました。

概要施策案
コミュニケーション不足の改善eNPSの低スコアが社内コミュニケーションの不足に起因している場合、定期的な全体ミーティングの実施や、経営層と従業員の直接対話の機会を増やすなどの施策を導入する
職場環境の改善職場環境に関する物理的な不満が多い場合、オフィスのレイアウト変更やリモートワーク制度の導入など、働きやすい環境づくりを進める
キャリア開発支援従業員の成長機会が不足していると指摘された場合、社内研修プログラムの拡充や、キャリアパスの明確化などを行う
報酬制度の見直し給与や福利厚生に関する不満が多い場合、業界水準を考慮しつつ、報酬制度の見直しを検討する

これらの施策を実行する際は、eNPSの測定結果だけでなく、従業員との対話を通じて具体的なニーズを把握することが重要です。

eNPS導入による社内風土の変化

eNPSの導入によって、組織の風土や文化に大きな変化をもたらす可能性があります。定期的なeNPS測定と結果のフィードバックを通じて、従業員と経営層の間でオープンな対話が促進されることによって、組織全体の透明性が向上し、相互の信頼関係の強化につながるでしょう。

また、eNPSを重要な指標のひとつとして扱うことで、従業員のエンゲージメントを重視する組織文化が形成されていきます。eNPSの導入を通じ、組織全体が一丸となって前向きな変革に取り組む姿勢を築いていくとよいでしょう。

eNPSの導入事例

ここでは、eNPSを導入した企業の具体的な事例を紹介します。

富士通グループ

富士通グループでは、顧客満足度調査を実施していたものの、グループ全体の経営に反映しづらいことが課題でした。

そこで、eNSP調査へと切り替え、世界各地からあがったこえを1つにプラットフォームに集約し、改善アクションへと繋げる体制を構築しました。調査によって得られたダイレクトな顧客の声を、積極的に経営にも活かしています。

SOMPOホールディングス

SOMPOホールディングスでは中長期的に財務価値や企業価値につながる価値のことを「未実現財務価値」と位置づけ、その実現に向けた取組みを行っています。

その取組みの中で各営業店のエンゲージメント関連ストアを図る際にeNPSを利用しており、品質や業績の向上はもちろん、自律的なキャリア形成の促進にも役立てています。

北國フィナンシャルホールディングス

北國フィナンシャルホールディングスでは2022年1月から、eNPSを用いた社員エンゲージメントサーベイを実施しています。

サーベイの結果は統合報告書で公表しているほか、分析結果をもとに取り組む施策についても記載するなど、取組みに対する透明性が高いのが特徴です。

リブセンス

リブセンス社では、業績や事業環境などの変動要因を特定するために、毎年eNPSを実施しています。業界平均データと比較し、自社のポジションを把握することに役立てているほか、エンゲージメントを高めることで優秀な人材から選ばれる会社を目指しています。

大和ハウスリート投資法人

大和ハウスリート投資法人では、サステナビリティ方針の取り組みとして、eNPSを実施しています。調査結果は従業員に向けて説明・フィードバックしており、よりよい職場環境づくりに活用しています。

セブン&アイ・ホールディングス

セブン&アイ・ホールディングスでは、eNPSを従業員エンゲージメント向上のための指標として採用しています。特に多様な従業員が働く小売業界において、eNPSは各部門や店舗ごとの課題を特定するのに活用しやすいそうです。結果を経営陣と共有し、具体的な改善策の立案につなげることで、従業員満足度の向上を図っています。

Unipos

Unipos社では、人的資本戦略の一環としてeNPSを導入し、従業員のはたらきがいを高めることで事業計画の達成や生産性の向上を目指しています。

eNPSは人的資本経営戦略の全体像において「人的資本主要KPI」として位置付けられており、職場推奨度の分布や推奨度に影響が高い要素、1年後の改善目標を公表しています。

従業員エンゲージメント向上に向けてeNPSの導入を検討しよう

eNPSは、従業員エンゲージメントを測定し、組織改善につなげるための強力なツールです。eNPS導入の成功のカギは、単なる数値の測定に留まらず、結果に基づいて具体的なアクションを起こし、継続的に改善を進めていくことにあります。また、eNPSを組織文化の一部として定着させることで、従業員と経営層の間の信頼関係を強化し、より強固で成長力のある組織を築くことができるでしょう。

ただし、eNPSはあくまでもひとつの目安に過ぎません。そのため、組織の状況や目的に応じて、他の評価指標や従業員フィードバック方法と組み合わせて活用することが重要です。自社の特性や課題を十分に考慮した上で、最適な形でeNPSを導入し、活用していくことをおすすめします。eNPSの導入を契機に、従業員一人ひとりが活き活きと働ける組織づくりに取り組んでみましょう。

従業員エンゲージメントを高めるなら「はたLuck」の活用も

従業員エンゲージメントを高めるなら、「はたLuck」がおすすめです。ここでは、「はたLuck」の主な機能について見ていきましょう。

エンゲージメントを可視化・分析できる「エンゲージメントプログラム」

「はたLuck」には、従業員エンゲージメントを高めるための「エンゲージメントプログラム」が用意されています。2ヶ月に1度、従業員向けにアンケートが配信され、エンゲージメントスコアを計測可能です。

「はたLuck」の行動データを組み合わせて解析することで、各職場におけるマネジメント課題の抽出と改善アクションを確認できます。個々の課題に対処することで、職場環境を改善できるほか、パフォーマンス向上も見込めるでしょう。

「星を贈る」機能で従業員に感謝の気持ちを伝える

「はたLuck」では仕事仲間に対する感謝の気持ちを「星」で送ることができます。初めての勤務を無事に終えた人や、急遽休みの人に変わって仕事に入ってくれた人に対して、簡単に気持ちを伝えることができます。

また、「星」に対して他の従業員からもコメントや拍手を送れることから、自然とやりとりが増え、雰囲気の良い職場作りにつながるでしょう。

クーポン情報を配布できる

「はたLuck」には従業員のエンゲージメント向上を目的として、おトクなクーポンを配信できる機能が備わっています。一般的な福利厚生サービスと異なり、特に貢献してくれている従業員に限定してクーポンを配布することも可能です。

レポート機能を活用して適切なフィードバックやフォローができる

「はたLuck」のレポート機能を活用すれば、店舗内業務のデータを可視化できます。売上や従業員満足度の高い店舗があれば、その店舗の運用方法について把握することで他の店舗に還元でできるでしょう。

はたLuck エンゲージメントプログラム for Workplace サービス紹介資料

従業員へのアンケートと「はたLuck」活用で蓄積された「行動データ」から店舗の課題を分析・可視化します。そこから導き出された課題改善アクションを実行し、モニタリングを継続していくことで、店舗のマネジメント力を向上させ、従業員のエンゲージメントを高めることが可能です。

店舗DXコラム編集部

HATALUCKマーケティンググループのスタッフが、記事の企画・執筆・編集を行なっています。店舗や施設を運営する方々向けにシフト作成負担の軽減やコミュニケーション改善、エンゲージメント向上を目的としたDXノウハウや業界の最新情報をお届けします。

関連記事

シフト管理・エンゲージメント向上・
情報共有などの機能が利用できるDXアプリ「はたLuck」

サービスについてもっと詳しく知りたい方
お見積りはこちら